電子辞書 E-D300(カシオ中国)

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カシオ中国のE-D300は、中国語電子辞書の1つの到達点と言って良いだろう。私はたいへん感動している。

ここ数年、私はスタンドアロンの電子辞書から離れていた。理由はいくつかあるが、最大の理由は魅力的な製品がないから。これにつきる。私が最後に購入したのはキヤノンのwordtank V923である。その前は同G90、セイコーのSR-T5030、SONYのDD-CH10などを使っていた。どの辞書も便利に使っていたのだが、キヤノンの最新モデルであるwordtank Z900の評判があまりにも悪く、買い換える気が失せてしまった。1 カシオから販売される電子辞書は液晶やコンテンツは魅力的だが、複数の辞書を一括検索することができないのがネックで、何度か店頭で触ってみたものの購入には至らなかった。それにパソコンで利用できる講談社中日辞典がたいへん使いやすく、電子辞書を持ち歩く必要がない在宅翻訳者としては「これで十分」という気にもなっていた。

とはいえ、私の座右の銘は「辞書は金で買える実力」である。毎日何十回、何百回と辞書を引くので、使い勝手の良い辞書を導入し、作業効率を上げることができるのであれば、財布のヒモはいつでも緩める。私はこと辞書に関してはオープンな人間なのである。

E-D300の何に魅かれたかというと、まずは収録されている辞書のラインナップである。中日辞書は「超級クラウン中日辞典」のみだが、日中は「日漢大辞典」と「新世紀日漢双解大辞典」というともに収録語数が15万語を超える大型の辞書を収録している。ちなみにどちらの辞書も日本国内向けの電子辞書で搭載している製品はない。「日漢大辞典」は講談社の「日本語大辞典」を底本としており、「新世紀日漢双解大辞典」は三省堂の「辞林21(および新辞林)」を底本としている。どちらも語数だけでなく内容も充実した頼りになる辞書である。

また、翻訳者としてうれしいのが中英、英中の辞書群である。牛津高階英漢双解詞典、英漢大詞典、漢英大詞典とどれも素晴らしい辞書ばかりで、翻訳調査の裏付け作業などで大活躍する。中日翻訳、日中翻訳でなぜ英語の辞書が必要になるのかと不思議に思うかもしれないが、調査作業というのは英語を軸にして行うことが多い。 日本語から中国語への翻訳の場合、日本語に対応する英語は辞書に載っているが中国語は分からない、ということが多い。また、特許翻訳では中国語の特許に対応するアメリカの特許を資料として参照することがあり、英語の辞書にはよくお世話になる。

E-D300はこれら充実した複数の辞書をまとめて検索することができる。日本で販売されているカシオの電子辞書では中国語のコンテンツをまとめて検索できないが、 E-D300は中国語や日本語の見出し語だけでなく、例文まで複数辞書を一括検索することができるのである。たとえば「マングース」という言葉を引いてみよう。以下の画像のように複数の辞書に収録されていることがわかる。複数の辞書で語義を確認できるというのは、翻訳者としてたいへん心強いし、E-D300では「跳查(ジャンプサーチ)」もできるので、「新世紀日漢双解大辞典」の説明部分に示されている英訳「mongoose」を再検索すると、今度はブリタニカ百科事典で「mongoose」についての説明を読むことができる。これまで複数の辞書やら資料をひっくり返して調べていたのが馬鹿馬鹿しくなるような便利さである。

日本語見出し語による複数辞書検索
新世紀日漢双解大辞典からテキストを選択してジャンプサーチ
ブリタニカ百科事典の説明を閲覧

このように繰り返し辞書を引いていて、感心するのが液晶の美しさである。5.3インチのカラー液晶は実に見やすい。フォントの美しさに関しては、昨今のアンドロイド携帯やiPhoneにこそ及ばないが、長時間眺めていても疲れないし、視認性も高い。中国や台湾のメーカーが作る電子辞書の中には、日本語の表示がどうしようもないものがあるが、そこはやはりカシオの製品である。なお、E-D300は中国向けの製品だが、UIの言語には日本語、英語、中国語のいずれかを選ぶことができるため、使い勝手は日本国内向けの製品と変わらない。エクスワードを使ったことがある人なら、操作体系も同じなので違和感なく使いこなせるだろう。

上記以外の感動ポイントをあげるとすれば、日本語コンテンツの数々だろう。正直にいって、購入した時はこのあたりのことをあまり考えていなかったのだが、E-D300には類語辞書から漢和辞典、国語辞典が収録されており、こうしたコンテンツも実に便利である。国語辞典は「スーパー大辞林」と「新明解国語辞典」が入っており、漢和辞典は私も紙版を長く愛用している「新漢語林」が入っている。文章の推敲に便利な類語辞書は小学館の「類語例解辞典」である。購入時に重視していなかった割には、これらコンテンツもよく使っており、日々助けられている。漢和辞典の手書き入力は、紙の辞書にはない電子辞書ならでは機能で、一度この便利さを知ると紙の辞書の部首と画数による検索には戻れない。

この電子辞書に対する不満はひとつ。追加コンテンツについてである。マイクロSDカードのスロットを2つも備えているのに購入できる追加コンテンツ(辞書)があまりに少なく、どう考えても宝の持ち腐れである。追加コンテンツは、日本のエクスワードで使われているコンテンツプラス(データプラス)と同じ仕組みを使っているようだが、ためしに手元にある小学館の中日・日中辞典(XS-SH12)を読み込ませようとしたところ「この電子辞書ではこの辞書を使うことはできません」と拒否された。ライセンスの問題などもあるんだろうけど、E-D300に小学館の辞書を追加できればさらに素晴らしい世界が広がっていただろうと予想されるだけに惜しい。このへん、なんとか考えてもらえませんか>関係者各位

このように小さな不満はあるものの、E-D300は素晴らしい辞書である。 初学者から翻訳者まで広くおすすめできる辞書であり、 なぜこれを日本でも販売しないのか、私にはさっぱり理解できない。さっぱり理解できないので、自分で仕入れて提供することにした。量を仕入れることはできなかったので、数は限られているが興味のある方はご連絡ください。

関連:karak オンラインショップ / CASIO 電子辞書 E-D300 (スノーホワイト)

  1. 買う気まんまんでV923をヤフオクで売ったというのに []

7件のコメント

  1. こんにちは。
    すごく興味あります。
    普段使いの中で、起動時間(電源を入れたり、レジューム復活したりしてから入力可能になるまでの時間)は何秒くらいでしょうか?

    1. 小桜さま

      起動は1.5秒、終了が2秒くらいでしょうか。
      以前当方が使っていた電子辞書に比べるとずいぶん速いような気がします。
      あとで起動と終了の様子を動画にしてアップしてみます。

  2. 動画まで作っていただいて、ありがとうございました。
    かなり速いですね!

  3. 在庫ありますか?今すぐは無理ですがいつか買いたいです。
    在庫が無い場合は今後仕入れる機会はございませんか?

    個人的に電子辞書に求める一番の機能は、サブパネルのミニ辞典です。
    最近のモデルはサブパネルが廃止されました。
    私見ですがUやNはサブパネルの液晶が暗いと感じます。
    なので私にとってDシリーズが現在最も求める機種です。

    過年度モデルは中古市場でしか入手できず、
    本E-D300のような外国人向け商品は尚更レアです。

    1. 現在、電子辞書の取り扱いは行っておらず、手元に商品はございません。
      お役に立てず恐縮です。
      当方も検索してみましたが、大陸でももう在庫はないようですね。

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