やってはいけない漢字変換 – 人名編

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中国語翻訳の仕事では時々人名が問題になります。たとえば企業の社内報で中国支社の業務を紹介している記事があるとしましょう。その記事に中国支社の「范总经理」が登場した場合、「」は「范围」の「」なので「」→「範」で変換を行い、「範総経理」としそうになります。

これは間違いです。

姓の「」と「範囲」の「範」は別の字なのです。ややこしいですが、もともと「范」と「範」という2つの漢字があり、使い分けられていたのです。それが簡体字が定められた際に「範」の簡体字も「」とされ、2つの漢字が1つにまとめられてしまいました。そのため、姓の「」を日本語や繁体字に変換する際は、「」のまま残す必要があります。日本のシフトJISにも台湾のBIG5にも「范」は収録されていますのでご安心ください。

このように注意が必要な姓は「于、余、姜、范、涂」の5つです。対応する繁体字はそれぞれ「於、餘、薑、範、塗」ですが、姓の場合は「于、余、姜、范、涂」のままです。簡体字と繁体字の2つの資料を作成する場合、変換ソフトウェアを使って一丁上がり!と片付けたくなりますが、人名は念入りに確認した方がいいでしょう。

繁体字から簡体字に変換する際、注意が必要な姓としては「乾」があります。「乾」の簡体字は「干」ですので、台湾人の「乾」さんを簡体字で紹介する際、「干」さんにしそうになりますが、簡体字でも姓の場合は「乾」を使います。

最後にもうひとつ。よくある間違いが簡体字「」です。新型コロナウイルス関連の報道で医師の「钟南山」氏の名前を目にした方も多いと思います。この方の名前を「鐘南山」としている記事をいくつか見かけました。これも間違いです。正しくは「鍾南山」です。「」の繁体字には「」と「」があり、姓の場合は「」にしなければなりません1。なお、囲城という小説を書いた「钱钟书」さんも「銭鍾書」となりますので、姓だけでなく名前の方にも目配りが必要です。

ちなみに人名の「」については、2013年の通用规范汉字表で「」が用意されたのですが、あまり普及していないようです。

WikipediaのTemplate:CGroup/姓氏のページには、上記以外の名前に用いる注意が必要な漢字として「杰、适、筑、愿、志、甯、强、恒」が取り上げられています。それほど多くはありませんので、これらに出くわしたら警戒度を引き上げられるように頭の片隅に置いておくと良いと思います。

  1. ただ、「」さんもいらっしゃるそうですので言い切ってしまっていいのかどうか……。 []

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