契約と合意

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契約書の翻訳をしていると、「合同」「协议」が全く同じように使われていて戸惑うことがあります。こちらのページでは、

合同和协议,两者不同。后者只是双方在一些原则问题上的协商,议定,合同则是在协议的基础上作出的具体规定。

という風に、双方の間にまず「协议」があって、その上で具体的な部分を詰めたのが「合同」だとされています。一般的な中日辞書でも「合同」は「契約」、「协议」は「合意.取り決め.協定」とされていますし、私も「まず合意があって、それをもとにさまざまな場面を想定して細かい部分を詰めたものが契約なんだな」と理解していました。
ところが、「契約」と「合意」にすっきりと訳し分けができるはずなのに、ちょうど英語の「contract」と「agreement」と同じように、どちらも「契約」の意味で使われている、という場面によく出くわします(
同じ1つの文書を指しているのに、ある場面では「協議」、ある場面では「合同」になっていることもあります。この場合は原文に問題があると思いますが……)。

中国の合同法によれば、合同とは

本法所称合同是平等主体的自然人、法人、其他组织之间设立、变更、终止民事权利义务关系的协议。

「本法にいう契約とは、平等な主体である自然人、法人、その他組織の間で交わされ、変更、停止される民事上の権利義務関係の取り決め」とされています。この定義を読むと合同协议の部分集合であるように思えますが、百度知道の合同书与协议书有什么不同?という質問を見ると、「协议书与合同书没有实质区别」とされています。こちらは协议书与合同书なのでちょっと違いますが、どちらもこれまでの私の理解と一致していないことに変わりはありません。

では日本ではどうなのか、と調べてみると、教えて!gooに「契約書と協定書の違い」という質問があり、日本でも「契約書、協定書、合意書、覚書、確認書」などに実質的な違いはないとされています。うーん、これで私のこれまでの理解は完全に崩壊です。

英語の「contract」と「agreement」の違い、中国語の「合同」「协议」の違い、日本語の「契約」と「合意」の違い、どこの国にも「2つの違いは何?」ということで悩んでいる人がいるようなのですが、どうしてこんなことが起こるのか不思議です。法律の世界は白黒はっきりしていると思っていたんですが……。

結局、原文が違う単語で表現している以上、同じ訳語をあてはめる訳にもいかないので、「协议」は「合意.取り決め.協定」に、「合同」は「契約」にするかたちで訳し分けをし、読み手が混乱する可能性があるときは注を入れておく、という風に処理することになりそうです(いろいろ調べたけれど、これまでと何も変わらない)。書いた人間がこの2つを使い分けている理由がわかるといいのですが、なんだかスッキリしません。

参考:英文契約書の基礎知識

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