最近話題の電子書籍を自分でも作成してみたかったので、3年ほど前に訳した魯迅の故郷に少し手を入れてePub形式にしてみた。ePubはXHTMLとCSS、フォント、画像をひとつのフォルダにまとめてZIPで圧縮したようなファイル形式なのでホームページを作ったことのある人間であれば、割合簡単に作成することができる。実際の成果物については以下のリンクからダウンロードしてePub用の適当なビューワで閲覧されたい。個人的にはAdobeのDigital EditionsかSONYのReader Library Softwareが使いやすいと思う。
ダウンロード:故郷 (ePub版)
ePubを作成するためのオーサリングソフトには、当初よく紹介されているsigilを使っていたのだが、日本語周りに問題があるようなので、途中から国産のFUSEeを使用した。現在公開されているのはベータ版でヘルプファイルなども用意されていないが、画面の構成を見れば使い方はなんとなく分かった1。
ePubには複数のフォントを同梱することができる。今回題材に選んだ「故郷」に登場する「猹」という漢字は、日本語のフォントには含まれていないため、簡体字用のフォントを追加しておかないと正しく表示されない。日本語のフォントもデフォルトのままだと読む気がなくなるので、コンテンツにマッチし、かつライセンス的にも気軽に利用できるフォントを追加しておいた方が良い。私は日本語のフォントとしてIPAモナーP明朝を選んだ。ePubにしたときに読みやすくおすすめである。簡体字中国語のフォントは、文鼎(Arphic)提供の簡体字宋体フォント(AR PL SungtiL GB:フォントファイル名はgbsn00lp.ttf)がファイルサイズがコンパクトで良い。日本語や中国語のフォントはどうしてもファイルサイズが大きくなるので、それを埋め込んだePubファイルも大きくなってしまう。20MBという目眩がしそうなサイズの中国語フォントもそれほど珍しい存在ではないので、見栄えの良いコンパクトなフォントは貴重である。
関連:文鼎のフォントのダウンロード先2
フォントの追加が終わったらCSSの作成である。本文に使用するフォントや中国語部分に使用するクラスの設定、行頭の字下げや本文両側のマージン、注を打つための上付きの設定など、画面の表示が読者のストレスにならないようにあれやこれやを設定する3。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 | @charset "UTF-8"; @font-face { font-family: "ipampmona", serif; src: url(../Fonts/ipamp-mona.ttf); } @font-face { font-family: "AR PL SungtiL GB", serif; src: url(../Fonts/gbsn00lp.ttf); } body { font-family: "ipampmona", serif; margin: 3%; } p { line-height: 150%; font-family: "ipampmona", serif; text-indent: 1em; } .cn { font-family :"AR PL SungtiL GB", SimSun, STSong, STKaiti, serif; } sup { font-size: 60%; vertical-align: text-top; line-height: 4px; } |
日中混在のテキストを扱いたい場合、中国語部分に適用するクラスが大切である。私は上掲のcnクラスを用意し、XHTMLの中国語部分を以下のspanタグで括るようにしている。念のため、classを指定するだけでなくxml:langも指定している。
<span xml:lang="zh-cn" class="cn">中国語のテキスト</span>
以上の作業が終わったら、FUSEeのファイルメニューから「ePubに書き出し」を実行する。できあがったePubをReader Libraryで開くと以下のようになった。
できあがったePubファイルがValidかどうかは、こちらのValidate ePub documentsを使うと良い。ちなみに今回作成した「故郷」のePubではrubyタグを使っていてそのあたりをしつこく指摘された。これについてはrubyにさっさと対応しない方が悪いと思うので私は直さない。
作ってみた感想
電子書籍とはいえ、相手にしているのはHTMLなので難しくはなかった。日中混在についてもUTF-8のWEBサイトを作る時と注意点はまったく同じである。フォントを埋め込むことができるので、テキストの見栄えについてはWEBサイトより見やすいものを提供することができる。これはなかなか楽しい。ブクログのパブーのような作成・販売プラットフォームも登場しているし、情報発信、自己表現、小遣い稼ぎの手段として大いに活用したい。
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